本当に、ふつうの一戸建て。
雨に目を細めながらその外観を眺め、突っ立っていると、気だるい声に「早くして」と急かされる。
ほんの数時間前まで知らなかった学校の先輩、しかも異性の家に、なぜ招かれているのか。
ぜんぜん頭が整理できないうちに、それでも濡れてしなしなのローファーを玄関先に置いて上がったのは、わたしと同じにずぶ濡れの人がめずらしくふり返って待っていてくれたから。
「おじゃまします……」
足を踏み入れてすぐに覚えた違和感。
それは一歩を重ねるごとに強くなってゆき、リビングへ通されたときには確信に変わっていた。
「ね……家、誰もいないんだね」
「まあ」
共働きなのかなあとぼんやり思った。
うちはお父さんが会社員、お母さんもパートタイマーで働き、お兄ちゃんは大学に通っているけど、わたしが帰宅するころにはすでに誰かいることがほとんどで。
夕食のおいしいにおい、賑やかなテレビの音、煌々と光る照明、ちょうどよく設定された空調。
そういう空間へしか帰ったことがないから、静寂と暗闇のみが待ちかまえるこの家に、ほんの少しだけさみしさみたいな、切なさみたいなものを感じてしまったんだ。
「いつもだいたい弟がいるけど、きょうはたぶん塾」
ユウくんにきょうだいがいるなら、たしかに下かもって気がした。
お兄ちゃんしているところ、ぜんぜん想像できないのに、なんかものすごく想像ついちゃうよ。



