シクシクとうっとうしく泣き続けるわたしが落ち着くまで、ユウくんはずっと傍にいてくれた。

もう頭は撫でてくれなかったし、なにも言葉はかけてくれなかったけど。

それでも誰かが隣にいてくれるというのは、ほかのなににもかえられない安心感がある。


そうして“くじらドーム”を出ると小雨だった。

今朝の天気予報、夕方以降は降らないと言っていたはずなのに大ハズレ。


「あんた、傘持ってる?」

「持ってない……」

「おれも」


まあ、このくらいの雨ならどうにかなるだろう。

そう意見が合致してバス停まで向かっていた途中で、いきなり容赦なく襲いかかってきた、冗談のような土砂降り。

バケツをひっくり返したような雨、というのはたぶんこういうのをいうんだ。
それにしてもタイミングが最悪すぎた。


「ひゃあ……びっちょびちょ」


バス停の屋根に避難したものの、ふたりとももはや手遅れなほど全身ずぶ濡れ。

そのままプールにでも飛びこんだんですか、といった感じの見た目。


しずくを滴らせている制服がとても重い。

カッターシャツが貼りつき、ところどころ肌色が透けて見えてしまっている。

中に黒色のキャミソールを重ね着しておいて本当によかった。


ユウくんも、わたしと同様ずくずくの制服を、とてもじれったそうにしていた。

そしてもともと長めの前髪が目に刺さりそうなのを、ふいに、右手で無造作にぐいとかき上げる。


「か……」

「なに?」


かっこよすぎ、と言いかけたのを生唾といっしょに飲みこんだ。

さっきまで泣いていたというのにわたしはなんてやつだ。

だって、顔が良い人はこんな最悪の豪雨さえ味方につけることができるのかって感動したの。

雨粒をダイヤモンドに変えてしまうなんて、わたしのようなヘイヘイボンボンにはとてもじゃないけど逆立ちしたってできない芸当だよ。