はじめての彼氏だった。
はじめて手を繋いで、はじめて抱き寄せられた。
はじめていっしょに写メを撮って待受にした。
はじめて男の子にスキって言ったし、はじめてスキって言ってもらった。
「――はえ?」
意図せず、まぬけな声が出る。
発声と同時に飲んでいた苺味のシェイクが口からこぼれるかと思った。
だって目の前に座る大好きなイケメンくんが、いきなり意味のわからないことを言うから。
「だから、おれたち別れよ?」
「……あ、うん。……え?」
「え?」
「ええええっ!?」
地元のファストフード店にもかかわらず、知り合いがひとりもいなくて本当によかった。
だってうっかりこんなシーン見られちゃったらサイテーだよ。
はじめての彼氏に木っ端みじんにふられているところ、なんて。
「いままでありがと、カンナちゃん。おたがい幸せになろうね」
突然ですが、望月カンナ、16歳。
ちなみにあと1か月ほどで17歳。
わたくし高校2年の梅雨入り直後、世紀の大失恋をしてしまったもようです。



