「その顔、あいつの前ですればいいのに」
ぽこん、なにかが頭の上に乗っかっている。
同時に視界がぐじゅっと歪んだ。
「きのうも笑ってただろ」
「え……」
「あいつとの別れ際。夕方5時半くらい、駅前のバーガー屋で」
なんで、とつぶやいたのといっしょに、ぼろりと涙の粒が両目からいっきに落ちた。
「見てたの……?」
「それから30分くらい放心状態だったのも」
頭の上の手のひらが、ぽこぽこ、くっついては離れていく。
ユウくんは頭を撫でるのがへたくそだと思った。
「まさかそいつにバス停で会うとは思ってなかったけど」
「ううっ」
「あんた、向いてないから、惚れっぽいのもたいがいにしたほうがいいんじゃね」
わたしね、恋愛には“カースト”が存在していると思ってるんだ。
たとえば、槙原先輩やヤスくんがカーストトップの男子なら、わたしは最下層の女子。
たとえば、槙原先輩やヤスくんが漫画のヒーローなら、わたしはモブ女子その30。
もしかしたら顔のパーツさえ描いてもらえないようなポジションかも。
そういうわたしが、立場もわきまえず、おこがましくカースト最上位を好きになってしまうあたり、ユウくんの言うとおりかなり恋愛に『向いてない』と思うよ。
だって最後に選ばれるのは同じカーストにいる、ヒロイン級の女子だもんね。
槙原先輩の彼女はアイドルみたいなサッカー部のマネージャーだった。
それでも、最下層でも、顔のないモブ女子でも、身の程以上の恋をすることくらいは許されていたかった。
たとえ向いていなくても。
どれほどみじめでも。
ユウくんにはひょっとしたら想像もできない気持ちかな。
「必要以上に傷つかなくていい」
なにを考えているのか、まるでわからないはずなのに。
いじわるな顔で、いじわるなことばかりを言うくせに。
「誰かを庇うために、あんたが傷つかなくていい」
頭の上に降ってきてはぽこんとぶつかる手のひらだけは、いじわるはナシで慰めてくれているって、勘違いしてもいいかな。
𓂃◌𓈒𓐍



