黙々と数分間歩き続けて、ユウくんが足を止めたのは、これまた見覚えのある施設の前。
「“くじらドーム”!」
懐かしさがいっぱいにこみ上がって思わず声を出す。
ユウくんが意外そうに目を見張る。
「知ってんの?」
「うん! 中学のころよく友達と遊びに来てたんだあ」
市内でいちばん大きなゲームセンターの魅力は、自転車を30分以上も漕ぐ労力にずっと勝るものだったから。
プリクラの台数が豊富で女子はこの場所が大好きだったし、バッティングセンターも併設しているから男子にも人気があったんだ。
高校生になってからはいろんな地区の友達が増えて、駅前で遊ぶことが多くなったから、なかなか来なくなってしまったけれど。
「ここならどれだけ叫んでも騒音にかき消されるんじゃないかと思って」
自動ドアのむこうに足を踏み入れながらしれっと言う。
「それってどういう意味!?」
あわてて追いかけ、隣にならんだ。
少しいじわるに口角を上げた顔がちらりとわたしを見下ろした。
「どれだけ泣いてもいいんじゃないって意味」
優しくされているのか、いじわるをされているのか、わからなくなる。
さっきまで人目をはばからずギャン泣きしていたこと、突然思い出して、いたたまれないほど恥ずかしくなった。
だってそういえば、いつのまにか涙がぴたりと止まっている。



