携帯を握りしめ、BARの外へ急いで出る。

携帯のディスプレイを見ると、【沙知絵さん(さちえ)】と表示されていた。





「もしもし?」

『あ、もしもしsAra.ちゃん!?沙知絵ですが…今大丈夫?』


沙知絵さんは甲高い声で言った。



沙知絵さんは、慶の叔母さんにあたる人。

私と一緒で、幼い頃両親に捨てられた慶は、慶のお母さんの妹にあたる沙知絵さんに育てられたらしい…


沙知絵さんは慶が事故に遭った日、すっ飛んで病院に駆けつけてきて、初対面だった私たちだが、慶が入院している今…こうやってちょくちょく連絡を取り合っていた。






「大丈夫ですよ」


私はそう言って、BARの入り口の横にあるベンチに腰掛けた。





『…あ、本当に?忙しい所すみません。』

「いえ…そんな‥とんでもない」

『最近、慶の様子はどうかなって思って…連絡したんだけど……』

「今日健二たちがお見舞いに行ったみたいなんですけど、『元気そうだった』って言ってましたよ」

『…ふふ。そう……良かった』


力ない声で笑う沙知絵さん。