本当に、歩はあの桜の木の下によくいた。 授業をちゃんと受けているのだろうか、とこちらが心配してしまうくらい、しょっちゅう見かけた。 彼はそこで、大半は本を読んで過ごしているようだった。 わたしは中庭で歩に会うたび、声をかけたり、目だけであいさつをしたりした。 彼はそれに優しく応じてくれた。