「何を考えている」
校長は久しぶりに笑った。
ユウも安心し、睨み合いをやめた。

「最近、学校に来てないみたいなんすよ。
この学校の頭ともあろう者が」
「真鍋利津か?」
「そうっす。良いんすか?頭が不在なんて
知られたら面目、丸つぶれっすよ?」
「本人から事情を聞いて、承諾している」
「事情?」
ユウが敏感に反応した。

「どんな事情っすか」
とある公園。
雨が降っていた。

「…自分の罪、か」
奈央が暗い顔をして、立ち尽くしている。
その背後には、鉄棒に座る利津の姿。
先ほど負かした不良がまわりには倒れていた。

「弱気になるな」
「でも…直さんでも倒せなかった人を、
あたしが負かすなんて…」
「簡単な話だろ。直には無くて、お前には
あるものをあいつは感じ取ったんじゃねーの?」
「直さんには無いもの…?」
「答えは自分で探せ。じゃなきゃ意味がねぇ」

利津は手で雨を受け止めて、
自分の罪を洗い流すかのように
空を見上げていた。

「…あなたは、何で」
奈央が利津に問いかける。
今まで思っていた疑問を言おうと
していた。利津は反応して、
奈央の方を向いた。