「ユウが留年してるって話はしたっすよね?」
「ああ」
「ユウが初めて呉羽に来たのは…4年前。
本当の歳は、直よりひとつ上の18歳っす。
ユウが一年留年して、直と同じ学年になった
時ー…直はユウに喧嘩を挑んできた」

ユウは立ち上がり、石を川に投げる。
大きな音を立てて石が沈むと、薫も下へ
移動した。

「ユウが留年してるのを知ってて、楽しい
喧嘩になると思ったんだろうな…強すぎて、
すぐ決着はついたよ。直が勝った」
「へぇ…お前も負けるのか」
「それなのに、喧嘩のあと直はユウを
最強軍団に誘ったんだ。それが悔しくて、
実力でコイツを負かしたいと思った」

『お前、あたしの部下にならないか?』

3年前の校庭で直がユウに言う。
爽やかな笑顔で、直は笑っていた。

「本当に喧嘩が好きって笑顔だったさ」
「…そうか…」

ユウの表情から直に対する気持ちを
読み取った薫は、それ以上問わないことに
した。ライバルでも、対立していても、
大切な存在だったのだろうな…

「ユウ」
薫の瞳は、ユウを真っ直ぐ見つめた。
「?」を浮かべて薫を見るユウ。

「そろそろ、帰るぞ」
薫は手を差し出した。
「…ああ」
ユウは土手をあがり、薫と呉羽へ帰っていった。