「私には良く分からないが、ごめん」
「…山田…」
ごめんという言葉を聞いて、
様子が変わるユウ。
ソレに薫も気づいたようだ。

「悪いことしたか?」
薫は手を離すとユウの顔を覗き込んだ。
ユウは顔色を元に戻し、薫の肩を
つかんで視線を横切った。
「平気だ」
先に行ってしまうユウを見ながら、
薫は傍観していた。

裏庭に出ると、何人かのヤンキーが
勢力争いをしていた。
黙って座り込んでそれを見る薫。

ー低レベルの喧嘩だ。
こんな雑魚同士で争いをして、
何か楽しいのだろうか。
上には上がいる。強い奴を
倒さないと、私は気がすまない。

だから強くなった。

「もう二度と…仲間を裏切らない。
アイツは…大切にしてやらないと」
薫の脳裏にユウが浮かんだ。

その頃のユウ。
多目的室の机の上に座り、音楽を
聞いて不機嫌な顔をしていた。

「くだらない。仲間なんて、
必要あるわけないだろ」
苦い顔をしながら爪を噛む。
相当トラウマがあるようだった。
イヤホンを外し、傍にあった
椅子を蹴る。

「胸くそ悪…。上に行くための
手駒にすぎない。その為なら利用
してやる。…一人の方が楽だ」