「幸せになんか、見えなかったよ」


少年は呟きます。

少年の思い出の中には、いつもあの人が泣いていた姿しかありません。


何かに祈るように、少年は目を瞑りました。

ややあってから、少年は目を開くと、拙く編まれた木の鎖を拾い上げました。

途切れた鎖を首に巻きつけ、少年は来た道をゆるゆると歩き始めます。

ずるりずるりと、巻ききれなかった鎖を引きずりながら。



昔々の、どこかの話。