「幾ら何でも過剰な荷物じゃない?たかだか一泊二日のキャンプなんだしさぁ」

苦笑いする芽々。

この荷物では、まるでどこぞの名峰にでも登頂するのかといった雰囲気だ。

「山を嘗めちゃあいけねぇな」

苦笑いに苦笑いを返して、宜虎が言う。

嘗めちゃいけねぇと言った張本人が、下駄で登山というのも妙な話だが。

「足りなきゃどこででも買い物できる街中たぁ訳が違うんだ。考えられるだけの物は準備しておくに越した事ぁねぇ。備えあれば嬉しいなってな」

「『備えあれば憂いなし』でしょ?」

すかさずツッコむ芽々。

隣で小夜がコクコクと頷く。

「かーっ!ちっせぇ事ぁ気にすんな!」

誤った諺の使用法を『ちっせぇ事』で片付けて。

「よっしゃ!出発すんぜ皆の衆!」

宜虎を先頭に、一行は歩き始めた。