きょうこは、歴史のある名神家の跡取り娘である。

名神という名は、古くは平安時代の文献にも記録されている。

現代と違って魑魅魍魎の存在が日常生活にまで深く影響していると信じられていた時代。

病や解明されていない自然現象、錯覚などは、全て『怪異』とされ、人間に不吉をもたらすものとされてきた。

それら『怪異』を祓う為に存在していたのが陰陽師、霊能力者、言霊使いといった類の者達である。

名神家はその中でも異彩を放つ、特殊な言霊使いの家柄だった。

その能力は名神家の血筋のみに与えられたもので、『自分の名前を文字変換する事により身体的能力、身体的特徴を変化させる』というもの。

勿論、平安から長い年月を経た現代の世にもその能力は連綿と受け継がれている。

後々名神の家を継ぐ事になるきょうこにも、その言霊使いの術式は伝えられているのだ。