天神学園高等部の奇怪な面々Ⅲ

まぁそんなこんなで、小夜の祖父の家を出発してから約二時間。

本来なら十五分もあれば到着する距離を、三人は延々と遭難寸前まで歩き回った。

それもこれも、葉也の極度の方向音痴のお陰なのだが。

だが、努力の甲斐あって。

「!」

疲労困憊だったきょうこが、何かに気づいたように顔を上げる。

聞こえてくる潮騒。

漂ってくる海風の香り。

ウミネコののんびりとした鳴き声が、ここまで届いた。

「あぁ…ああぁあぁ…」

陽がむせび泣く。

「よかったぁ…生きて山から出られたよぉ、お兄ちゃぁあぁん…」

というか、たかが十五分の距離を無事歩いただけで、何を感動して泣いているのだろう、この人は。