天神学園高等部の奇怪な面々Ⅲ

今来た道を引き返して、葉也を探し回る二人。

すっかり汗だくになるし、藪をつついて蚊に刺されまくってあちこち痒いし、もう最悪だ。

「今頃海にいる筈だったのに…今頃海にいる筈だったのに…」

きょうこが何かにとり憑かれたように何度も繰り返している。

頬に汗でペットリと髪の毛を貼り付けたまま、うわ言のように呟き続ける姿は客観的に見てちょっとキモイ。

だが、陽にも彼女の気持ちは痛いほどわかる。

(てかイタイのは高校生にもなって山で迷子になる葉也だっての…あ、やべえ、腹立ってきた)

胸の奥から湧き上がる軽い殺意にも似た衝動を抑えながら葉也を探していると。

「何だお前達、こんなとこにいたのか」

木々の間からヒョッコリと。

何食わぬ顔をして葉也が姿を現した。

「どこ行ってたんだ全く…探したじゃないか。あんまり手間をかけさせるな」

などとシレッとぬかす葉也。

「「コイツって奴は…」」

疲労と脱力感にガックリと跪く二人だった。