だというのに。

この教室では二人の男子生徒が向かい合っていた。

右、学園に似つかわしくない違和感たっぷりの着流し姿。

手にするのは黒塗りの木刀。

天神学園高等部1年生、藤原 宜虎(ふじわら たかとら)だ。

左、そんな宜虎と対峙するのは、長い黒髪をポニーテールにした端正な顔立ちの男子生徒。

クールな表情を微塵も崩さないまま、腰のベルトに帯びた日本刀に片手を添えている。

宜虎のクラスメイト、黒部 葉也(くろべ ようや)。

ここが学び舎だという事も忘れたかのように、両者の間にはピリピリとした空気が流れる。

緊迫した雰囲気。

まかり間違えば、互いの持つ得物で今にも斬り結び始めるのではないか。

そんな一触即発の状況だった。

そんな中。

…葉也は氷の如き冷徹な面持ちで、冷たく宜虎に言い放つ。

「……海だ。海水浴の方がいいに決まっている」