【短編】好き。


うつむいて、手に力を入れる。そして、深呼吸をしてキッと田中達を睨む。


泣くと思った?


……あいにく、あたしにはそんなベリーキュートな乙女の真似なんかできないの!


だから全然モテないし、翔平にも女として見てもらえないのよ!!(泣)



「ちょっと、あんた達――」


「いい根性してるじゃん、テメェ等」



耳に入っためちゃくちゃ低い声。
聞き慣れたその声は――


あたしの大好きな声。



「翔平?」



あたしの横を通り越して行った翔平は真っ直ぐ田中の元へと歩み寄った。


そして田中の胸ぐらを掴んで。



「お前に綾の魅力が分かってたまるか!」



と、怒鳴って田中の頬を力強く殴った。