「あははっ、ごめんごめん。それで今、一人の子に目を付けてて――?」
携帯が鳴り、エフの話を中断させる。悪い、と断りを入れてから、オレは隣の部屋で電話に出た。
『透、今一人か!?』
「えっ? それがどうかしたのか?」
『っ……楓が、来てないか?』
「いや、来てない。樋代がどうかしたのか?」
いつになく焦った声。何かあったのは明白だ。黙ったままの誠司に、オレはまた同じことを聞いた。
「おい、樋代に何があった?」
『…………わからない』
「? わからない?」
『昨日から……帰ってないんだっ。目ぼしいやつには電話したけど、みんな知らないって言うから』
もちろん本人に何度も電話したが、今日になると電源が切れて繋がらないらしい。
『あいつが黙ってでかけるはずないんだ。……透も、一緒に探してくれないか?』
「わかった。今どこにいるんだ? うん、うん――じゃあまた」
隣の部屋に戻ると、話は明日にでもしてくれと頼んだ。
「顔が真剣ね? 緊急事態って感じ?」
「友だちが昨日から帰ってないんだ。だから今から――?」
コタツには、さっきまで無かった写真が数枚。その中の一枚に、オレは見知った顔を見つけた。
「――ここに写ってる人」
「表ざたになってない神隠し被害者。透くんが持ってる写真の子は、さっき話した目印付けた子なの」
写真にあったのは樋代の姿。目印を付けてるなら話は早い。写ってる子を探していると言えば、エフは罰が悪そうな表情を浮かべた。
「その子が消えたのって……昨日よね?」
「友だちの話だとそうらしい」
「なら間に合うか。――クロ、二人を手伝って」
「構わないが、貴女はどうする?」
「ちょっと準備してから行くわ。もう少し部屋にいるけどいい?」
「あぁ。鍵をしっかりしててくれればな」
合鍵を渡すと、オレはひのと男と共に誠司との待ち合わせ場所に向かった。



