「と言うことで――透くん、おじゃまさせてねぇ~」
「悪い。主は一度言い出すと聞かないんだ」
「まぁ……予想はしてた」
入って来た時のあの顔を見たら、帰らないなとは思ったよ。
そのままエフは、あの猫並にずけずけと家に上がりこみ、コタツでひのと寛いでいた。男はというと、コーヒーを淹れるオレを手伝いカップを運んでくれたり、結構気遣ってくれていた。
「砂糖とミルクはご自由に」
差し出すと、エフはティースプーン三杯の砂糖とミルクを入れて飲むなり、これでもかってぐらいのんびりとした顔をしていた。
「やっぱり冬はコタツよねぇ~」
あ、猫と同じこと言ってる。ここにアイツがいたら気が合いそうだ。
「――主、早く本題を」
ぬくぬくとしている姿に呆れたのか、男はため息をついた。
「もぉ~まだ後からでいいじゃない」
「よくない。貴女が話さないなら、自分が話す」
「わかったわよ。――二人とも【神隠し】って知ってる?」
急に引き締まる表情に、思わず息をのんだ。
神隠しってのがどんなものかは知ってる。今まで一緒に遊んでた子が突然消えたり、数日後にはひょっこり帰って来たり来なかったりするあれだ。
「実は今月に入って、この付近で失踪事件が起きてるの。最近ようやくニュースでも言うようになったんだけどね。あんまりウワサになってるから調べてみたんだけど――」
はぁ……とため息をつき、罰の悪そうな表情を浮かべた。
「どうもね、消えた人たちは数日のうちに帰って来るらしいの」
「帰って来るならいいじゃないか」
「それがただ帰って来るわけじゃないの。また数日後、その人は別な人を連れて消える。そして次に見つかった時、二人とも全身の血を抜かれ、体に妙なアザを残して死んでいるのを発見。――どう? ウワサするにはもってこいの内容でしょ?」
「確かに……ってか、そんなうわさがあるなんて始めて聞いた」
「具体的な被害は把握しているの?」
「わかってるだけで数件。でも、実際はこれより多いでしょうねぇ。――んでもって、こっからが本番なんだけど」
さっきよりも声を引き締め、エフは続ける。



