「わ、わかったわよぉ……。ねぇ、透くん」
「なんだ?」
「またひーちゃんに会いたいから、目印持っててくれない?」
そう言って、エフはオレに真っ白い小さな石を渡してきた。
「できれば肌身離さず持ってて。ついでに、危険が迫った時は知らせてくれる代物だから」
石が赤色に変わると、その場所は危険だと警告してくれるらしい。そういうことなら、ずっと持っている方が安全だな。
「ありがとう。今度会ったらお礼するよ」
「ホント!? 約束だからねぇ~! ひーちゃんも頑張って~」
来た時と同じく、エフはあっと言う間にどこかへ消えてしまった。
すると疲れたのか。少女はベンチでうな垂れていた。
「体、悪くしたのか?」
「……いいえ。ただ、エフとの会話に疲れただけです」
「そっか。にしても、やっぱりちゃんと友だちがいたんじゃないか。エフに話すみたいに、オレにもあんな感じでいいのに」
「……あのような話し方、透には失礼です」
昨日の今日だけあって、まだオレに気を使うのはやめてくれないか。でも、エフって子と知り合えたのはよかったな。彼女がいれば、少しは打ち解けるのが早くなってくれそうだし。
夕日が沈み、辺り一面が夜に染まり始める。
オレたちはもう少し、その場で空を眺めていた。
◇◆◇◆◇
「――――あのさ」
完全に日が落ちた時、透は意を決したように口を開いた。
「名前――『ひの』ってどうかな?」
エフがひーちゃんと言っていたことと、今の夕日を見て思いついたようだ。
「――気に入らないか?」
「いいえ。透がいいなら構いません。エフのように呼ばれないだけ満足です。――行きましょうか」
周りに街灯が少ないこともあってか、この辺りは一段と暗い。戻る前に病院の前を通りたいと言えば、透はわかったと言い付き合ってくれた。
柵の前には街灯が等間隔に配置されている。よく見れば、カメラのような物もが内側に向けて付けられていた。



