「私が知っている病院とは、風貌が違うようですが――」
「違って当然だろうな。ここ、精神病院らしいから」
柵を見るまで半信半疑だったが、こんな外観を見てしまえば、ここがそういった患者専門だっていうのに納得した。
少女を見れば、じーっと病院を見ている。ひとしきり全体を見ると、ふぅっとため息をもらした。
「何か……見つけたのか?」
「いえ、特には。普通の病院とは違い、こういった場所では負の感情が集まりやすいのですが、今は大丈夫なようです」
なら安心だ。またここで一戦交える、なんてことになったらどうしようかと思った。
「せっかく来たんだし、もう少し上がってみないか?」
「まだ上れるんですか?」
「あぁ、前にマラソン大会で通ったんだ」
確か――見晴らしのいい場所もあったはず。誠司情報だから間違いないだろう。こういうスポットは詳しいからなぁアイツ。
時間的に、ちょうど夕日が色付きだしている。
開けた場所に来ると、散歩や走ってる人をちらほら見かける。奥にベンチを見つけたオレは、あそこで休憩しようと言った。特に反論されることなくベンチに向かっていると。
「んわっ!?」
いきなり頭を下げられ、そのまましゃがんでいるよう言われた。
周りを見ても怪しいヤツなんていない。オレには見えないバケモノでもいるのかと思えば、
「――――ひっさしぶり~!」
空から急に、少女が降って来た。
「久しぶりじゃない。ほら、離れて」
「えぇ~久しぶりだって。もう百年ぐらい経つでしょ?」
「いちいち覚えてない」
どうやら、空から降って来た少女とは知り合いらしいが――オレ的には今、少女が敬語で話していないことに気がいっていた。
「おおかた、クロを振り切ってここに来たんでしょう? 怒られても知らないから」
「そんなこと言っても、なんだかんだで宥めてくれるのがひーちゃんじゃない」
「あのう……盛り上がってるとこ悪いんですが」
話しかけなきゃずっと続きそうなんで、オレは立ち上がり声をかけた。



