「お願いですから、関わることはしないで下さい! でないと、大福買ってきませんからね!?」
「なんじゃと!? ワシの好物を取るなど酷いっ……お主は鬼じゃ、人の皮を被った鬼じゃ!!」
「そっちこそ何が神様だ。見た目が猫なだけかと思えば、神様らしいとこなんて一つもないヤツが言えた口か!」
「あ~もう怒った。ワシはもう怒ったぞ。これから毎晩、お主に悪夢を見せてやるからなぁ~!?」
「ちょっ!」
猫は泣きながら(本当かどうか疑問だが)、窓から外に飛び出してしまった。
「まさか……本気で悪夢を見せるなんてこと」
思わずもれた言葉に、それまで無言を貫いていた少女が言う。
「さすがに毎晩はないかと。せいぜい二、三日がいいところでしょう」
いやいや。二、三日だろうと、悪夢を見せられるなんて願い下げだ。――やっぱり、大福は多めに買ってくることにしよう。
◇
午後三時頃、外を回りたいという少女に付き添い、オレたちは街を歩いていた。クリスマスが終わったこともあり、装飾は徐々にお正月モードに切り替わりつつある。
――ちなみに、まだ少女の名前は考えついてない。思い付くには思い付くんだが、なんか友だちにいそうな名前で、ソイツのイメージが少女にそぐわないもんだから決め兼ねている。
「――――あれは」
声をかけられ少女を見れば、学校がある方を指差していた。
「透が通っているところですよね?」
「あぁ、そこの普通科にいるんだ。君も、学校に行ったことあるのか?」
「学校と呼べるほどのものではないですが、読み書き程度なら教わる場所がありました。――後ろの建物も、学校の一部ですか?」
「あ~あの建物か。近いけど敷地は分かれてる。あそこ病院なんだよ」
途端、少女は興味を示したのか、病院の方を凝視し始めた。何かあるのかと聞けば、行けるところまで行きたいと言われた。隣にあるとはいえ、入口まで行ったことがないから、できる限り近い場所を目指し歩いた。
学校がある場所は、街から見ると小高い位置にある。病院はそれよりも高い場所にあり、街全体を見下ろせるようになっている。学校の横道を上って行くと、だんだん木々が多くなり、閑静な雰囲気が漂っている。ゆっくり散策するにはぴったりの場所だろう。――しばらく歩けば、周りの自然とは合わない頑丈な柵が姿を現した。三メール程の高さの柵の奥には、他の病院で見るドアと同じドアが見えた。



