アイツと私の婚約ドタバタ生活

「…またか」

柳原歩と呼ばれた医者はやたら真剣に千景を見る。あんまりじろじろ見ないでほしい。なんかムカつくし…

「おい、起きろ千景」

ペチペチと千景の頬をたたく柳原。‘千景’…だと?

「なに呼び捨てにしてんだ…」

「おお?お前こいつの彼しか何かか?」

挑発するような瞳でこちらを俺よりも多少高い場所で見下ろす柳原。とことんムカつく奴だなぁ…!!っていうか、千景を起こすな!!

「ん…渉くん…?」

ゆっくりと瞳をあける千景。かわいい。大変可愛いのだが…

‘渉’ねぇ…

俺の中で怒りがわいた。しかし、今は千景の体調の方が大事なので抑える

「今の気分はどうだ?」

「ん~…平気」

何が平気だ。ものすごく辛そうだぞ。見てられないくらい弱ってるくせに

「薬、いつものだけど一応出しとくから飲めよ?」

「はいあいさ~」

のんきな返事だな…。気が抜ける…

俺は落としそうになりながらも千景をしっかり支えた