『先生、会いにきてくれてありがとう!おやすみ』


直は、大きく手を振って、俺を見送ってくれた。

いつも学校で手を振ってくれるように…

ぶんぶんと大きく。


月明かりの下で俺も手を振った。



寒さなんて感じなかった。

直は、精一杯の笑顔を俺にくれた。




触れることはできなくても、

直と会えた。



直の心に触れることができた。




帰りの車の中で流れていた曲は、ビリージョエルだった。




あの日、流れていた曲と同じ…


切ない曲。





でも、今は 温かく 愛に溢れた曲に聞こえる。






信号が赤になると、俺は窓から月を見た。



きっと、今もまだあいつは月を見ているから…