「おい!矢沢ぁ!お前は、俺にチョコくれないの?」


誰もいなくなった廊下で、矢沢は目を大きくして俺を見つめた。


一瞬とても大人っぽい目をしたもんだから、俺はドキドキしてしまった。


「あ~げない!先生いっぱいもらってるじゃん!」


俺の背中をポンっと叩く。


「ば~か!」


俺は、手に持っていた日誌で矢沢の頭をポンっと叩く。


見上げた顔は、いつもの元気な矢沢の顔だった。

寂しげな表情もどこかへ消えていた。