桐野くんは

文庫本を持ったまま




あたしの横をスッと通り抜けて
図書室を出た。




その瞬間


あたしは
耐え切れなくなった涙腺を緩めた。



「バカだな...あたしは......」



少しだけ、

桐野くんに近付けたと思ってた。



『そばにいてやる』―――――――


って言ったくせに...。




「...うそつき......」



こんなに苦しいなんて
思いもしなかった。




恋なんて

するんじゃなかった。