『っ……あや…っ…愛してるっ…』

私の視線をしっかりと捉え、その人は顔をゆがめた。
その目に身体中がぞくりとした。


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まぶたにやわらかなあたたみを感じる。

が、眠い。

頭を撫でられている。

が、眠い。

とても心地よい。

このままもう一度眠りに落ちよう。

『や…あや。…あーや……ねぼすけ。…あやぶー。』

『…』

ゆっくり目を開けると、誰かが私のまぶたにキスをおとして髪をいじっていた。

何かの間違いだ、これは。

『やっと起きたか、あやぶー』

私ってば、えらくリアルな夢見るようになったもんだ。

『起きてますかー??ホットケーキでいー??』

くちびるを指でふにふにされて。

…夢じゃないぞ、これ。

あ、目つきが変わった。
なんていうか色っぽくなった。
と思った瞬間、顔が近付いてきて唇が重ねられた。

全くもって脳の思考が停止している。


とりあえず目の前にいる男の人を私は見たことがない。

今寝ているベッドどころか、この部屋の全てが私のものではない。

そしてなぜか私は裸に毛布一枚なわけで。

何この漫画とか携帯小説みたいなシチュエーションは…

ヤッちゃったってやつですか…
ワンナイトラブってやつですか…


私、木藤彩音は彼氏いない歴=年齢な大学1年生。

「彼氏いたことない」っていうと必ずびっくりされる。

そこそこ「可愛い」と言われて育ってきた。
合コンに参加すれば、必ず男の子からお声はかかる。
後日「今度2人で遊ぼう」ってメールが送られてこないことがないくらい。
にもかかわらず、この恋愛経験値の低さは、恋愛に臆病なせいだと思ってる。思いたい。