「サツキちゃん、酒クサ!」

部屋に案内するなり、鶴田さんは鼻をつまんだ。

「うん…ごめん。まあ、座って」

あたしは鶴田さんの上着を預かりハンガーに掛けながら、顔をしかめた。

大声出されると頭に響く。

鶴田さんはベッドに腰掛け、持ってきた紙袋から次々とパンを取り出した。

「サツキちゃんの好きなメロンパンとか、チョコクロワッサンとかアップルパイとか、たくさん買ってきたんだけど、その様子じゃ食べられそうにないな」

おいしそうな匂いだけど…。

テーブルに並べられたパンを見て、

ウッ…と思ったが、

「大丈夫。一緒に食べましょ」

あたしは無理矢理微笑んだ。

鶴田さんは、ソープランドに高いお金を払って来ているのに、何もせずに帰るタイプのお客さん。


初めて付いたときは、


小洒落た感じの人だけど高級店に来るには年齢的に若そうだな…

地方から来た人が

「いざ、吉原!」

なんて奮発しちゃった感じの一見さんかな?

それとも誰かに連れてきてもらったのかな?


と思った。

実際は、鶴田さんはお店を経営していて、接待で誰かを連れてきたんだそうだ。


最初は、

「これがソープランドか!うわ、お風呂と部屋がつながってる!」

なんて驚いてキョロキョロしていた。


そう、建前では

「 男性の入浴のお手伝いをする仕事」

なので、お風呂と部屋に仕切りがないのがソープ。


そんなことを説明しながら、

「なんでそれで仕切りがないのかっていうのは、突っ込まないでくださいね、わかんないんで」

あたしが仕事を始めようとしたら、

鶴田さんは、何もしなくていいからいろいろ話そうよなんて言ってきた。