「…リオン、髪の毛全部引っ込抜くよ。」

「わぁお。
相変わらず怖い発言しちゃうんだねー、姫様は♪」


わざわざ『姫様』を強調して弄るところが気に食わない。


彼の名は、リオン。
正式には、ホーエンリバルタ・リオン・トト。

この王宮に代々仕える仕立屋の一人息子だ。

腕は確かで、そういう点ではいつも尊敬している、が。


少々自分勝手で、自分が気に入っている人の依頼しか受けない。
さらに、自分の仕立てた服を気に入って貰えなければ、今後一切その人の依頼を受けないのだ。


「今日はお誕生日なんだよなー。
お前が16なんて有り得ねー。プッ。
だって結婚できる年齢だぜ!!(笑)
ギャハハ!!
…あー、腹いてー(笑)」


…そしてコイツは人を苛立たせる才能に長けている。

ただ、コイツの口車に乗って勝利を得た覚えはないので、無視をする。

「あ、怒っちゃった?(笑)
姫様は繊細なお方ですものねー。」


ニコッという効果音が付く程の笑顔で毒を吐く。

これに短気な私が耐えられる筈もなく、


「…黙れ、遊び人!!」


そう呟いたのも束の間、一瞬でリオンの拘束から脱け出し、即座に身構える。


…それでも未だ、余裕そうな表情をしてやがる。


「遊び人は酷くないかー?
俺は只、あっちの誘いに乗ってやってるだけだぜー?」

この妙に語尾を伸ばす癖も鬱陶しい。


「だったらさっさとお姉様方の相手に行きやがれ!!」