道を登って走る。
なのに不思議と疲れない。
むしろ、力が湧き立つ感じさえする。
不思議な気持ちだ。
いつの間にか、男の子の後を走るのではなく、隣を走るようになっていた。
だから、男の子が突然足を止めたとき、勢い余って転んでしまった。

「あったぁ……」

ひざが痛い……。
私が転んだのに男の子は引っ張られたりもせず、ぼんやりと前を見て立っていた。
男の子の視線を追ってみる。
そのとたん、しゃんっと鈴の音が聞こえた。
道の向こうにぼんやりと光が現れる。
一つ、二つ……と。
それは近づいてくる。

「あ……」

なにかの行列だ。
それは、男の子と同じお面をかぶった人の行列だった。
その行列の真ん中に、神輿に担がれた花嫁衣裳の人がいた。
彼女は雪と狐のお面の男の子を交互に見ると、そっとお辞儀をした。
そしてまたしゃんっ音が鳴り、行列が動き出す。
そこでようやく雪は行列がとまっていたこと、そして動き出したことに気付いた。

「いまのって……」

「嫁入りだよ……もう行こう。時間がない」

なんの時間?
そう聞きたかったのに、どこに連れて行こうとするの?そう聞きたかったのに。
行きたくないってその手を振り払いたかったのに、うん、とうなずいてまた走り出した。