「おはよう、春樹」

「……おはようございます、お嬢様」


唐突な、今更ながらの挨拶。

勤めて、平静であろうとする恵理夜の表情。


春樹――そう呼ばれた青年は、スーツを纏った肩をすくめながら挨拶を返した。

長身に、整えられた黒い髪。

それが縁取るのは、高い鼻に切れ長の目と言う端正な印象を抱く顔だ。

決して表情豊かとはいえないが、それが彼の真面目さを表しているようだった。


「せっかくの制服が台無しですよ」


と、恵理夜の纏うセーラー服をブラシで整えてやる。

そのスマートな動きはまさに執事と呼ぶにふさわしかった。