俺の名前は宮本正輝。二十歳。


シンガーソングライターを目指して群馬から上京。


今はイタリアンレストランでアルバイトしながら、音楽活動してる。


でも最近お客さんの女性に恋をしてしまったんだ。


彼女の名前は岩崎トシ子さん。


彼女は俺より10歳年上で、30歳。


なんでそこまで知ってるかというと、お店のポイントカードのお客様情報をこっそり見ちゃったから。


正直そんなに上だとは思ってなかった。


なんたって見た目がメッチャ綺麗だし、少女のような貞淑さを持っているからね。


でも彼女には一つだけ欠点があった。


それは服装がダサいこと!


80年代のトレンディドラマみたいな格好なんだよ。


爽やかなんだけど、とても現代の感覚じゃない。


大体上着の袖を腰に巻き付けてるんだよ。


今そんな人いないでしょ?


かと思えば皮ジャンを着てきたりするし・・・。


俺が彼女を好きなことはバイト先のみんな知ってるから、彼女が来るといつも茶化される。


3つ年上のバイト仲間・池澤くんなんかは


「宮本君、トシ子来てるよ。今日皮ジャン着てるよ。大仁田みたいだよ、ワハハ」


と面白がって茶化してくるので、


「背中に男樹って書いてねぇだろうがよぉ!!」


と、ちょっとキレ気味に返したり。


でもそんなギャップに恋した部分も確かにある。


俺って昔からちょっとヘンな子が好きだから。


でもこの想いはずっと胸の中に閉まっておくものだと思ってた。


俺なんて相手にされるわけないし、それに言ってなかったけど、俺も彼女いるし。


でもありえないと思える景色ほど見たいと思うことってありません?


もう少し大人になれば、冒険なんてせずに、予定調和な平凡な人生でいいと思う。


でもたとえ今の生活がメチャクチャになっても、彼女と見える景色を紡ぎたいと思ったんだ。