シャツを掴んでいた手を離した。 それから、自然と足が動いた。 後ずさりをして、背中を向ける。 困りきった様子で眉尻を下げたハルの顔が目に焼き付いて、胸が張り裂けそうだった。 そして、あたしは ── ── 走った。 あんな顔、見ていられない。 あんな表情、させたくない。 何よりあたしが、いられなかった。 どんな顔をして、あれ以上、一緒にいたらいいの? ……無理だよ。 だから脱力しそうだった体に力を振り絞り、夢中で走ったんだ。