あきれるくらい側にいて

 
「阿久津君がいないと、ツマンな~い!」


盛り上がる輪の中から、女子社員の声が聞こえた。

課の中で参加していないのは、ただ一人。

明日からの出張の前入りで欠席したと、さっき耳にした。

次の企画の調査のために久米島まで行く彼は、週末まで戻らないらしい。


いつもの飲み会にどこか違和感を感じていたのは、ロケーションのせいだと思ってたけど……それは、ハルがいないせいだろうか?

明るい性格だけど、決して騒がしいタイプじゃないし。何処にいても目立つというわけでもない。

だけど、ハルがいるとほっこりと場が和んで。
ハルが笑ってるだけで、穏やかな気持ちになれた。

偶然街中で会ったあの日から、話はしていない。会社ではもちろん会っているし、席だって斜め前なのに。

ハルと喋れないのは、やっぱりつまんなくて。
ハルがいない飲み会は、やっぱり寂しい。って思う。


タダシと別れることは自分で決断したことなのに、まだ何かやり残してるように思うのは、ハルが関係してるのだろうか。

この胸に痞えてるものは、なんだろう……?