あきれるくらい側にいて


 
伸び気味の髪は、多忙なワークスケジュールのせいだろう。

いつもより長めの毛先が風に揺れて、そんな彼が妙に大人っぽく見える。

会社では毎日顔を合わせているのに、偶然会ったことを懐かしく感じているのは、あたし達が前みたいに話していないからだよね。


人ごみの中にハルを見つけた時、そこへ近づくことを躊躇ってしまった。

また避けられたら、って思ったから。

そう思っただけで……思っただけなのに、何故かあたしは泣きそうだった。


離れた場所で向かい合い、立ち止まったまま。

鼻の奥がツンとして、気を抜くと膝から折れてしまいそうで ――



「ハル……」


目の前に立つ彼を見上げ、久しぶりにその呼び名を口にした。