あきれるくらい側にいて

 
そんな出来事があったからかもしれない。いつもよりあたしが強気な態度に出れたのは。

遅めの昼食にしようかとこのお店に入り個室に案内され、タダシが座るのを確認した後で、あたしは話を切りだした。


「あたし、あなたのこと本気で好きじゃないかも」


最初に口にしたのは、そんな一言だった。

目の前で煙草に火を点けようとした彼は一瞬動きを止めた後で、純銀のライターをカチリと鳴らした。

こっちには視線を向けず、唇から細く白い煙を吐き出す。

そんな様子を見つめながら、次の言葉を続けた。


「それに、あなたの気持ちもよくわからないの。あたしのこと愛してるのかどうか……本気じゃないかも、なんて言っておいてなんだけど。
ただね、こんな気持ちのまま結婚することが不安だっていうか、正直言って結婚してしまっていいのかって思ってる」