あきれるくらい側にいて


「ん、んー……」


あたしの心の叫びが聞こえたのか、もそっと動いた若い男。

驚いたあたしは後ろに仰け反り、黙ってその動向を見守った。

すると男の瞼がゆっくりと開き、パチパチと瞬きを繰り返し。そして、少しの間視線を漂わせ……

……やがて定まった。


シーンと静まり返る部屋の中で、壁掛け時計の音が主張する。


カチコチ、カチコチ……カチコチ、カチコチ。

無言のまま、目と目を合わせ固まっているあたし達。

カチコチ、カチコチ……カチコチ、カチコチ。


先に動いたのは相手だった。

黒く丸い瞳が下方向に動き、遅れてその先を辿ると……


「んぎゃーーーーっ!!!」


あたしは大慌てで、露わになっている胸を両腕で隠したのだった。