ハアハアハア……









随分遠くまで来たもんだ。











山の草原地帯まで追い掛け、夜とはいえ障害物もないこの広い場所は、月の光でよく見渡せる。










そのおかげか、ようやく黒ガラスの姿を発見した。










「待て! もう逃がさないぞ!」










東照宮を離れ、眠り猫のスピードも徐々に戻っている。









これなら何とかなるか?











それも、相手は分かっているようだ。











「やれやれ……使うつもりはなかったが、見せてやろう我が特殊能力を」











特殊能力!?











オッサンはその言葉を知らない眠り猫に、そっとアドバイスを聞かせた。











「注意するんだ。霊の特殊能力ってのは様々な技がある。家康公の虎の術の『虎砲』ってヤツもそうだし、中には炎や氷を扱うのも居る」










「そうか……まあ、我が輩は負けないよ。キャット、一瞬にして勝負がつくニャ」










きっと一瞬にして……と言いたかったのか?






そんな無理して猫語を使わなくても……












お互いが対峙し、風が草原の草を奏でる。











先に動いたのは、黒ガラスだった。










「見よ! これが特殊能力だ!!」