……ドサッ
尻餅をついて、驚かされた礼子。
目の前には、さっきまで気持ちよさそうに寝ていた霊が、目を光らせ見下ろしている。
間一髪オッサンの一声で、攻撃を直接喰らわなかったのだ。
オッサンに慌てて引っ張られ、ある程度の距離を保ち礼子を起こす。
「イテテ、なんなのアレ?」
そう聞くと、オッサンは呆れたように答える。
「礼子君勉強したまえ。あれが家康公の墓を護っている通称『眠り猫』。眠って居るのは狸寝入り。それを油断させて墓を荒らす輩を襲うのだ」
寺の至る所に祀ってある、眠り猫の像。
そのどれもが寝ているが、爪を出して居る。
これは狸寝入りで、実は起きて警護していると言う有名なお話である。
「じゃあ、あの子は正式な番人なんだね? ってキャ!!」
さっきまで立って居た眠り猫は、一瞬にして詰め寄り攻撃を仕掛けた!
「うわ!!」
2人は引き離らかされ、間に眠り猫は立ち尽くす。
何というスピードだ。
グググ……
迷わず眠り猫は礼子の方に姿を向け、背中を丸めた。
これは猫が強大なジャンプを見せるときの、臨戦態勢だ



