山越え、谷越え、森を越え。
ようやく栃木県に入った、礼子とオッサン。
久々の街中を通り、目指す日光市まであと少し。
「ベロベロバー!!」
「ギャース!! ウワーン!!」
礼子が両手を上げるのに対し、鳴きながら去ってゆく者。
オッサンは溜め息つきながら、遠くから彼女を呼んだ。
「ホラホラ、霊の縄張り争いしてイタズラに威嚇しない。さっさと行くよ(ってかこっちの地方の霊、凄い叫び方するな……)」
遊びもしつつ向かうが、何しろここ数日間は歩きっぱなし。
霊だから疲れはしないが、暇を持て余し飽きてきたとこだ。
「疲れたよ~オッサン~~。その辺の喫茶店入ろうよ~~」
だから疲れないちゅーに。
しかも、喫茶店て……
「入っても食えないでしょ。無駄な事には付き合わないよ」
「でも供え物はエネルギー貰えるでしょ? それでもいいから~」
コイツ……
客が頼んだ物を、自分の供え物にしようと考えているのか?
それをすると、本来人間が食べる食物のエネルギーが減るので、霊界では手は付けないのが常識。
礼子のソレは、他人の物も俺の物と言う、まさにジャイ○ン式考えである



