礼子は重い腰を上げると、ようやく出発する気になった。
ケツの下には、花がクシャリと潰れている。
気付いてないとはいえ、思いやりがない……
そんな風にオッサンが見ていると、たまたま通りかかった目の前の通行人が空き缶をポイ捨てした。
それを見た礼子は激怒。
「ムム! アタシの正義の血が騒ぐ! 常識ない人は許さなーい!」
ドン!と風を放出すると、それにあおられて通行人は街のゴミ箱に頭から突っ込んだ。
「キャハハ! 一件落着~~♪ねっアタシはこんな些細な悪でも許さないんだよ。安心して任せてねカナブン!」
自分の事を棚に上げやがった……
「はい! 頼りになりますね」
しかも、素直に信じたこの子が不憫だ。
やはり昔のような、あの里子と過ごしたような落ち着いた日々が欲しいと思ってきた。
何も困ってない平和な霊界で、礼子の為にハラハラドキドキしても仕方ない。
うまく成仏しないか?
それを真剣に考えていた。
でも……
担当者として、冷た過ぎだろうか?
「さあ行こ行こ。私は礼子ねヨロシク。そこの貧相なジジイはポチね。ポチって呼ぶと『ワウン』って情けない声で鳴くよ」
……ぜってー成仏させてやる



