だがお互い離れ過ぎているので、微かに動く事は可能であった。
「おい。礼子……」
「うぎぎぎ……なーにニャンコちゃん……おやつはいつもの戸棚よ」
礼子はいつもの調子だが、眠り猫は少し違った。
どこか寂しげな目をしている。
「門番歴400年……ずっと一匹で家康様を護って来たが、お前達に会えて楽しかったよ……」
「え……?」
グググ……
眠り猫はゆっくりと体制を沈め、頭と手を前に構え、背中を張りお尻を上げた。
猪突モードの構えをすると、黒ガラスはそれに対抗する。
「馬鹿め。真正面から飛び込むつもりか? 我が新虎砲で迎え撃ってやる」
敵も金縛りをかけられても、口を開けることくらいは出来る。
何とか開けきると、眠り猫撃退の為の構えをする。
このまま行けば、自殺しに飛び込むようなものだ。
馬鹿な礼子でも、そのくらいは分かった



