「君も風邪? いる?」
礼子は札を差し出すが、当然受け取るわけはない。
黒ガラスは腹が立ち、全て消し飛ばそうと試みる。
「わわ!」
急に眠り猫に引っ張られ、ティッシュ(札)を全て落としてしまった。
「バカ呆然としてるニャ! 消されるとこだったぞ」
再び俊足の世界に入るが、先程より景色がゆっくりに見える。
何故?
それは、眠り猫のダメージが深刻だからだ。
連戦に続く連戦。
いよいよ力を使い果たしたと言ったとこか?
足が使えなければ、これではもう黒ガラスに勝てる見込みも何もない。
もはや、絶望と言う道を進むのみか。
「ククク……体力も尽き掛けて来たか。いつまで走れるかな」
フッと黒ガラスは自分の姿を消すが、相手もまた様子がおかしかった。
そう……姿を消したハズの空間から、煙が出ているのだ。
「なっ! これは……」
透明になった自分の手を見るが、それ自体は綺麗に消えているものの、先程札に受けた傷から煙が生じたままだ。
これでは姿を消しても、まるで意味はない。
「チャンスニャ!! アイツの傷が塞がる前に、一気にたたみかける!」



