いつまでこうして走り回るつもりか?
時だけが無駄に過ぎてゆく。
普通なら眠り猫を無視して黒ガラスは家康の墓に行ってもおかしくないが、確かに気配はするので動きを止めるわけにもいかない。
……と思ったばかりなのに、眠り猫は急に足を止めてしまった。
「い、家康様!?」
戦いの中心に、突如として現れた徳川家康。
いつもの袴に、太鼓っ腹をどっしり構えて仁王立つ。
目が見えないのか、震えながら辺りを手探りにフラついている。
「家康様!! ここは危ないニャ!」
そう言って、頭で考えるよりも本能だけで家康の手を掴み、再び俊足で辺りを走りまくる。
右手に礼子、左手に徳川家康と言う形だ。
スンスン……
風に揺られながらも、礼子は鼻を兎のようにヒクヒクさせた。
「ねえ、眠り猫~この家康のオッサンっての黒ガッパと同じ匂いするんだけど」
!!
その言葉を聞いて後ろを顔だけ振り返ると、家康はちょうど口を開けている所であった。
「コ!!!!!」



