ヤツの能力は、人を騙し潜在意識を操る力。









一番力の強い礼子を抑えていれば、後は敵じゃないと言ったとこか。










お生憎と、コチラには眠り猫が居た為に、その作戦も通じなかったが……










「もしかしてサキさんはアイツに操られてるんじゃないか? だとすると、元に戻っているかもしれない」










オッサンはそう推測する。




あの氷の能力と雰囲気からして、今回みたいに偽物ではなく、まず本物として見てもいいだろう。










なら、やはり彼女は騙されているのだと考えられる。











「よーし、サキさんが居れば一気に形勢逆転かも! ホラッ礼子君急ぐよ!」









「キャハハ! 眠り猫こんなとこで寝ちゃったよ。アタシも寝ーようっと」











先程の土産屋で買ったハンモックを取り出し、その上で眠る礼子。










本当なら置いていきたいとこだが、連れて行かねばなるまい。









「いいから行くよ、終わったら君の好きな物何でも買ってやるから。よっと」











オッサンはそう言いながら、眠り猫を背負った。











「本当? 何でも? うわーい! 行く行く頑張る!」










礼子は飛び起き、オッサンと共に森の中に走って行った。










森に2人の声がこだまし、声が遠くなっていく。










(言っとくけど、5千円以内だぞ)












(薄給のオッサンには期待してないよ。クシャミもはっきゅしょいみたいな)










最後に黙れと言うツッコミと共に、再び森は深夜の虫の音色だけと化した……