傷だらけで、いつ消滅してもおかしくない状態ではあるが、黄鬼は地面から何とか起き上がった。










虫の息の状態。











しかし、チャンスが巡ってきたと顔をニヤつかせる。











「フ……フフ……攻撃出来る霊は、これで1人も居なくなったね……ゲホッ。退散する前に、せめて一匹くらいは仕留めていくわ!」










血だらけのまま悪魔の形相で襲いかかって来るので、オッサンはヒイっと目を瞑った。











すると不意に隣に居た礼子は、何の前置きもなく立ち上がった。










「うっさいよ、このドブス」










バチコーーン!!











笑顔のまま、黄鬼をビンタ。











この程度の攻撃にも吹っ飛び、敵のダメージはもう限界。










オッサンは驚き、礼子に確かめた。










「礼子君、いいの? お姉ちゃん怖いって、さっきまでビビってたのに」












「はえ? オッサンボケた? お姉ちゃん何ていないよアタシ」










それを聞くと、黄鬼は歯を食いしばる。









「キー! 私の幻術が切れたか……流石にもう相手にしてらんないわ!」










ここは潮時だと観念した黄鬼は、そのまま森の奥へと逃げていった……










辺りは静寂が訪れる。









見事、大勝利だ。









しかし、勝利を収めた気持ちより、何か肩透かしをくらったような気分である。










「何だ……礼子君の姉と見せたのは嘘だったのか。通りで霊力がこの子みたいに、化け物地味でないわけだ」










狐に化かされた……と言ったとこだろう