普通。
一般人。
あたしは、そんな家庭に生まれたかった。
ホント、今更なんだけどさ。
「普通、か」
「…えぇ。…この時代に持ってはいない物を持っていますけど」
土方さんが、納得いかないような顔になっており、まだ判断を決めかねている。
また重い沈黙が流れたけど、最初よりはマシな雰囲気。
「…副長」
「なんだ、斎藤?」
「…神崎を、一度部屋へ戻しましょうか?」
「……そうだな。斎藤、頼む」
着いて来い、という冷静な声に安心し、ペコリと頭を下げてから部屋を出る。
部屋から出た空気は澄んでいて、とても気持ちが良かった。

