一君と呼ばれた人は、立ち止まって、クルリと振り返った。
「……おはよう、総司」
「おはようございます!」
一君と呼ばれた人が、あたしの方へ視線を移し、黙っている。
知的そうな、いつも冷静で周りを観察していそう。
「千春さん、こちらは斎藤一君です。すごく強い方なんですよ!」
「…初めまして。神崎千春です」
「……斎藤一だ」
簡単な自己紹介が終わった後、互いに無言になる。
斎藤一…確か、左利きで…新撰組で沖田さんと並ぶくらいの強さを持っているんだっけ。
「それじゃ、一君も一緒に行きましょう!」
「……あぁ」
3人で無言のまま歩く。
それでも緊張したり、嫌な感じがしないのは…やっぱり、沖田さんがいるから、だろうか。
そんなことを考えているうちに、大広間と思われる部屋の前に着いた。
自然に、身体が緊張してしまう。
沖田さんはお構い無しに、襖を大きく開けた。
「遅れてしまって申し訳ありませーん!」
ふと、謝る気があるのかな?と思ってしまった。

