「お前、馬鹿だろ」
「………」
なんか、土方さんに勝ち誇ったような表情で指を指されると…ムカつく。
でも、そんなときでも一々絵になるから、もっとムカついてくる。
「これは、全部千春さんの着物なんですよ?」
「………」
「第一、四六時中そんな珍妙な姿でいると怪しすぎるからな」
別に、ただの女中なんだから、こんなに高そうな着物、買って貰わなくていいのに。
でも、そうとも言えず、一応ペコリと頭を下げて、お礼を言った。
「………ありがとうございます」
「いいんですよ。さ、部屋へ運びましょう」
沖田さんが、あたしの着物を殆ど持ってくれて、帯ぐらいしか運ぶ物がない。
すごく手持ち無沙汰だけど、部屋を出る前にもう一度土方さんに頭を下げた。
「……ありがとうございました」
「いいから、早く出ていけ」
怒っているのか、照れ隠しのつもりか、そっぽを向いている土方さん。
あたしは、襖を静かに閉めて、向こうで重そうな着物を抱えている沖田さんを追いかけた。

