…………。
この人、誰なんやろ。
いや、わかるけど!
でも…でも!
つい、目の前にいる男の人を凝視してしまう。
「ええか?俺は大阪の商人、それから雪さんの旦那や。くれぐれも俺のこと『山崎さん』って呼んだらあかんで?」
「あの、山崎さん…ですよね?」
「阿呆!今そうやって呼ぶな、って言ったとこやろ!」
いや、そう言われても…変装しすぎて誰かわからへんもん。
服と髪型を工夫するだけで、こうも印象が変わるもんやねんなぁ…。
あの冷静な雰囲気を醸し出していた山崎さんが、今は何処にでもおる人に見える。
なんか、こう…上手いこと言われへんけど…、
存在感が無くなった感じがする。
「まあええわ。次から気ぃつけてや?」
「はい!丞さん」
そう返事を返すと、山崎さん、もとい丞さんは満足そうに笑った。
うちと丞さんは『仮』の夫婦。
任務は密偵で、内容は桝屋の秘密を暴いて証拠を掴むこと。
主に蔵の中身が気になるみたいやけど…武器の類が入ってるんやろうか?
「よし!雪さんの女中の仕事も終わったし、ぼちぼち桝屋行くか」
「はい!丞さん、頼りにしてます!」
「おう、任せとき!」
今日は初めての密偵の日。
よし、気合い入れて仕事せなあかんな!

